【韓国文学読みました】「仕事の喜びと哀しみ」

読書

前にブログでご紹介した「2021韓国文学レビューコンテスト」の課題図書の一つ「仕事の喜びと哀しみ」を読みました。

大部分の人は生きるため、生活のために仕事をして、そんな毎日の中に喜びだったり哀しみだったり、様々な感情が生まれてくると思います。日本の場合は学校を卒業したら何の疑いもなく自然に就職活動をして就職しますよね。この本は韓国で働く若者たちの様々な日常や思いを描いた短編小説8作がおさめられた短編集です。

なかなか思い通りにいかない日々を過ごす韓国の若者たちの感情が実に生き生きと描かれていますが、私たち日本人にはちょっと理解できないな…というような話もあって、韓国社会の「会社絶対主義」や「上司絶対主義」には驚かされます。本のタイトルにもなっている「仕事の喜びと哀しみ」の状況はもし日本だったら絶対に訴えられてしまうレベルです。もちろん小説ですから多少の誇張もあるのかもしれません。でも、日本人が書いたらSFレベルだと思います!(笑)かなり理不尽な状況に追い詰められた登場人物は「おかしいと思っちゃいけない。そう思ったら頭がおかしくなるから」と言って、状況を受け入れているのは本当に驚きです。

じゃあ、この話は本当にまるっきり嘘なのか?というと、私も実際に会社に相当なストレスを抱えた韓国人サラリーマンが毎日眠れないという話を直接聞いたことがあるので、ここまでとはいかないものの近いレベルはあるのでしょうね…

ただ、登場人物たちはあきらめ半分、状況を変えようとじたばた半分でいろいろ模索しています。そして、それはみんな女性です。

韓国は儒教文化が根付いた国ですから、本当に最近まで日本以上の男尊女卑が激しい国でした。数年前に日本でも話題になった「82年生まれ・キムジヨン」ではキムジヨンという女性が少しずつ、女性であるということで社会に与えられる負担に心をむしばまれていく過程が描かれていました。

この本の作者、チャンリュジュンさんは90年代生まれなので、キムジヨンより少しあとの世代ですから登場人物の年代は80年代後半から90年代生まれと思われ、彼女たちが置かれた状況と戦って、前の世代よりは男性と対等に近づいているんだなということも感じられます。

私が韓国に滞在していた2017年~2018年はセクハラ問題などが浮かび上がり、韓国人女性の地位向上に向けて世論が大きく動いていた時期でした。これからどんどん韓国人女性の状況は変わってくるでしょうし、SF並みに不思議な韓国の会社もきっと変わっていくんだろうな。という希望を見いだせる本だと思います。

興味のある方はぜひ一度読んでみてください。(もちろん日本語訳ありです!)


韓国語原文で読んでみたい方

#review_k_literature

コメント

タイトルとURLをコピーしました